椿姫

東京文化会館の資料室に用事があったんだけど、大ホールの前を横切ると、どうやら今日は二期会主催の「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」が上演されるようだ。聞いてみると安い当日券もあるみたいなので、本当にふらっとオペラを観ることにした。


ん〜、先ず思った感想としては、締まりのない舞台だったなあ。今回演出の宮本亜門はちゃんとこの台本と楽譜を読み込んだんだろうか?

自分が一番気になったのは、社交会・パーティの場面において、ヴィオレッタとアルフレード以外の登場人物の扱いについてだ。
合唱を担う群衆は黒い出で立ちで、群衆という匿名性を高めている。その反面、主役以外の登場人物達は特別な衣装を身にまとい、コロスとの差別化を明確にしている。そしてあたかも主役に準ずるかのように立ち振る舞うわけだが、これが解せない。
ヴィオレッタ、アルフレードの関係者だけが浮き上がるという漠然とした演出では、全体を幻想的なイメージでまとめるにしても、「誰の」幻想なのかがわからず、ピンぼけも甚だしい。
それにトラヴィアータの美しさって、社交会のような有象無象の中で、ふと彼らだけにフォーカスが寄るその儚さだと思う。既にその状況だけで幻想が成立しているはずなのに、蛇足感は否めない。

もちろん、宮本亜門の方向性でたどり着く正解もあったのかもしれないが、とりあえず今回に限っては散漫な印象で終わってしまった。

カーテンコールで宮本亜門にブーイングが起こっていた。彼らの心情はわかるけど、あんまり気持ちのいいものではないなあ。

あとは歌手陣が…
けどバリトンの小森輝彦さんは歌唱もさることながら、演技力で舞台を引き締めてましたね。